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八丈島のゴミ処分場問題 [八丈島]

R0011393~1.jpg 10/11島でもらったビラ

豊かな自然・・・というイメージがある八丈島ですが、ことゴミと環境問題に関する限り大きな問題を抱えています。

島でいま、ゴミ処分場を巡る住民運動がおきています。これまで環境に無関心だった層まで危惧を抱いた計画が進んでいるためです。離島という特殊な構造の中で、事なかれ主義が横行していた島のありように対して、初めての住民運動ではないかと、ここ10数年、八丈島の自然や風土を撮影してきた元報道カメラマンとして強く感じているわけです。

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八丈島は全島が極相林であるスダジイにおおわれ、水源の森がもたらす豊かな水、おいしい水の島というイメージがあります。

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森の神様というべきスダジイの巨木。標高400メートルにある、水源の森のシンボルです。

この森の近く、水海山(みずみやま)にゴミ焼却灰などを埋める最終処分場の建設計画が進んでいます。

火山島である八丈島の地下水系はおそらく想像以上に地下水脈が網の目のように張り巡らされ、水の惑星そのものといってもいいかもしれません。そうしたデリケートな場所に大胆にメスというより、山刀をふるうような計画があるわけです。

まさに「水源の森」にあたる場所に、汚染などが心配される処分場が建設されるなど、ちょっと耳を疑う話ですが、どうやら計画は「順調」に進んでいるようで、危機感が抱いたもの言わない住民の方々がやむにやまれず署名運動をスタートさせたのも当然かもしれません。

■ 住民代表の議員先生方は、住民の意をくんで正しく行動しているのか?

■ 町当局は、地下浸透水に頼る島の水源への危機という認識はあるのか?

■ 観光など産業への影響をどう評価したのか?  

いくつかの疑問点がありますが、どうやら納税者の意想に関係なく筋書きどおりに進んでいるような印象です。(パンフレット、七島新聞、南海タイムズなどを読んだだけですが・・・)

伊藤ハムの地下水からシアン化合物が検出された問題になっています。地下水の流れはよく分かっていないのが現状です。精細な調査もしていないのに、最終処分場を上流部に作るなど行政が思考停止状態に陥っているとしか思えない暴挙ではないかと思われます。処分場は安全かつ耐久性のある遮水シートで覆われるので地下への浸透はない・・という当局の意見があるようですが、せいぜい10年くらいの寿命のようですし、もっと早く破れることもあって各地で問題を引き起こしてます。そもそも、「安全」だからといって汚水がもれる恐れのある水脈の上に処分場を建設することなど、問題外でしょう。

いま八丈島では危機感を抱いた複数のグループが署名運動を始めています。もし、町、議員がそうした民意を汲まず妨害するようであれば、島に民主主義はあるのか?ということにまります。この問題はたまたま島を訪れた私が関知したように、今のところ島内だけにとどまっています。しかし、こうした暴挙というか愚挙が明るみに出るようになると、楽園「八丈島」のイメージダウンは避けられないでしょう。

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私がかつて、東北の自然保護運動を取材した経験では、スタート時の「原生林」を守る運動から、「里山」へ視点を移し、水源の森を守る住民運動として多くの市民の共感を得た経緯があります。つまり奥深い水源の森は、水を通じて里山や町場の住民の安全な生活を支えているというとらえ方です。水がキーワードなのです。

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平成2年頃、仙台のシンボル・清流だった広瀬川が濁りはじめ問題になりました。

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原因は、当時存在した林野庁の皆伐林野行政で源流の山が荒れたためです。

粘り強い住民運動で、原生林の伐採はストップし、やがて林野庁は消滅しましたが、荒れた源流の森が元に戻ったわけではありません。東北の極相林=ブナ林は漢字で「橅」と書いたりします。「ブナは木では無い」とした戦後林野行政は橅征伐の名の元に、橅林の皆伐→杉、檜の植林をして林野行政と称していました。住民にそのツケが回ってきたわけです。

その時、インタビュー取材した主婦の言葉が「蛇口をひねれば森が見える」・・・・。

同じ頃、私は森と海の関係の取材もしました。

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漁業が盛んな宮城県・気仙沼湾。源流の森は岩手県・室根山にあります。

かつて山のひとたちと海の人たちは深いつながりを意識していたといいます。しかし、近年、山があれるとともに、漁獲高も減りそれまでになかった視点での運動が宮城県で始まりました。沿岸漁業の不振は、山と深い関係があることに気がついたわけです。

DSC04754.JPG ←畠山重篤さん

森と海の関係に着目した漁民の畠山重篤さんは、山からやってくる植物性プランクトンや豊富なミネラルを含んだ水源の森からの水が、海の生態系維持のために極めて大事なことにきがつきます。そこで、源流の山に木を植える運動をはじめました。

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名付けて「森は海の恋人」。こうした畠山さんたちの運動は広い共感をよんで教科書にも取り上げられるようになりました。

いま島で起きているゴミ処分場の問題は、基幹産業の漁業に与える影響も大きいのです。一部の住民の意識の問題ではなく、島で暮らす人たちの安全と暮らしの問題です。R0011381.JPG

そういうわけで、八丈島ファンの私には、東京から300キロの離島、八丈島でいまおきているゴミ処分場問題は、かつて東北の自然保護団体などが繰り広げてきた水源の森を守る住民運動の延長線上と受け止めています。

R0011394~1.jpg 10/11島でもらったビラ

八丈島の主な産業は、農業、観光、漁業です。

今回のゴミ処理場建設問題をはじめ、現在の排水・下水処理も問題を抱えています。ひたすら環境に負荷を与え続けるやり方でいいのか?今回のゴミ処分場問題は、島の多くの方が思っていながら見過ごしてきた問題点を明るみに出しました。これを機会に根本的な見直しを住民の合意の上で進めていかないと、子孫がその高いツケをやがて払うことは想像できます。いま求められているのは、島の将来を見据えた誤りのない選択と行動をすることではないかと思います。

八丈関係のブログを見てみますと、住民の方々も事態は深刻と受け止め、心配している方も大勢おられるようです。しかし、心配なら誰でもできるわけで、署名運動も行政側が聞く耳を持たなければ反映されません。閉塞的な島の人間関係を考えると、具体的な行動を起こすことは難しいのかもしれません。

2003年暮れ、公明党・参議院議員の沢ゆうじ先生は、大島のゴミ処分場を視察し「島民の不安を解消したい」と決意を述べています。八丈島のゴミ処分場問題に対しても決然と対処していただけるでしょう。沢先生ご自身のwebのタイトルは「東京から日本を変える」と力強いですね。さすが、公明党です。また先生は「報道出身の即戦力」とご自身を謙遜していっておられますので、間違いなく心強い味方になってくれるかも~♪ 

今回のゴミ処分場問題は、楽園に潜む影を明るみに出しつつありますが、住民にとっても「今さえよければいいのか?」と一人一人にそう問いかけているような気がします。

波にちゃぷちゃぷ浮かんでいる「ひょっこりひょうたん島」(八丈もモデルのひとつ?)はどこへ行こうというのか?行き着く先が「夢の島」や「豊島」でないことを祈っております。


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NO NAME

はじめまして、私は先日ブログに八丈島のゴミ処理の件を載せた者です、
今八丈島は少しづつゴミについて考えはじめています、でも島民のみなさんもまだどう動いたらいいのか分からないようです、昨日も署名してくださいと我が家に運動をしている方が見えましたが、本当にそれでいいのか?と
考えさせられます、さらに広報に町長がゴミ処理場の件でコメントを載せていますその内容もひどい内容でした、阻止しようとしている動きがある等・・
説得するような内容です、このコメントに更に島民の方が激怒したらしく・・
運動をされている方に話を聞くと行政と派手にもめたくは無くどうしたらいいかなと・・・・・長く島に住んでいる方はいろいろつながりがあって大変そうです。
私も島にきて2年半ですが、本当に良い島だと思いますが・・・・

by NO NAME (2008-11-04 16:26) 

hamapro

狭い島は人間関係も凝縮されますね。大きな自然の中で、ちっぽけなヒトの気持ちの格差を、楽園で知るのは悲しいものがあります・・・。

今回の出来事が島のいろんなことをあぶりだしているようですが、大事なことは民主主義は機能しているか?ということだと思います。
かつて宮城県では住民運動の高まりで、市長と知事を塀の中に追い込んでことがあります。最後の手段は、直接請求ということになりますが、行政側は正しいプロセスを踏んで欲しいものです。



by hamapro (2008-11-05 09:41) 

宮城県 水山養殖場

宮城県 水山養殖場(代表 畠山重篤、牡蠣の森を慕う会)と申します。代表に関するコメント、誠にありがとうございます。このたび畠山重篤エッセイブログ「リアスの海辺から」の掲載を開始いたしましたのでご案内いたします。ご覧いただければ幸甚です。今後ともよろしくお願いいたします。(水山養殖場WebStore HP管理者:http://mizuyama-oyster-farm.com
by 宮城県 水山養殖場 (2010-07-08 13:48) 

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